中小企業にもローカルファイルの作成は必要

 寄付金課税の概要はご存知のことと思いますが、復習すると、寄付金の額は、一定の限度額を超過した部分の金額は、法人の課税所得の計算上、損金に入れることができません。

 税法上の寄付金とは、税法には定義がされていないのですが、一般的な寄付金の概念よりもかなり広くとらえられています。また、寄付をする側に、寄付しようという意図がなくても寄付金として認定されてしまうことがあります。

 

 ところで、法人が、外国の関連会社に寄付をしたと認定された場合には、その認定額全額が損金算入をできないことはご存知ですか? 

 国外の関連会社への寄付金の問題で悩ましいのが、移転価格税制との境界です。国外関連者との取引について、それが、移転価格税制の適用があるのか、寄付金の適用があるのかが、その線引きがはっきりしないのです。

 その切り分け基準に関して、国税庁は一応のルールを「異端価格事務運営要領の制定について(事務運営指針)」の3−19(国外関連者に対する寄付金)で定めています。

 しかし、その定めでは、「金銭その他の資産または経済的な利益の贈与又は無償の供与」に該当するときに寄付金と認定することとしています。

 この下線部は、まさに、認定寄付金のことですから、認定寄付金に該当するときは寄付金課税の対象とする。といっているだけで、トートロージ(=ある事柄を述べるのに、同義語または類語または同語を反復させる修辞技法のこと)であるのではないでしょうか?

 

 移転価格の対象になった場合とクロスボーダーの寄付金の対象となった場合のメリット・デメリットを考えてみます。

 移転価格税制の場合、移転価格税制は、国税庁の一元管理の下で運営されています。これは、この税制が導入時に、民間から、この税制は乱用的に運営されると、予測可能性がそこなわれ、経済活動が委縮してしまうので慎重な運営をしていただきたいという要望をうけ、国税庁の一元管理の対象となったという経緯があります。従って、移転価格のメリット1として、慎重な対応が期待できます。次に、メリット2として、対応的調整の対象になり、二重課税の排除が期待できます。この対応的調整というのは、例えば、日本の親会社と海外の子会社との取引で、日本側が、30の利益ではなく50の利益(つまり、20の課税所得増)となった場合に、このままでは、この20は、海外子会社でも利益として計上され、現地で納税していることから、二重課税になってしまいます。この二重課税排除のための装置として対応的調整が機能します。メリット3として、国衙関連会社の所在地国の課税当局と日本の課税東京との間での相互協議に持ち込むことができます。

 移転価格税制のメリットのコインの裏側として、寄付金課税のデメリットは、現場の判断で、課税処分が行われる。すなわち、すこし乱暴な税務調査と安易な思い込みで課税処分が行われているように見受けられます。実際、筆者も、移転価格にしないので、寄付金課税にしてやるから、修正に応じなさいといったいささか乱暴な修正の勧奨の申し出を受けたことがあります。第二のデメリットとして、寄付金認定されると、先の例では、贈与者である日本の法人は20が益金算入され、受贈者である外国法人も課税されて終わり。二重課税の是正措置がありません。 相互協議にも乗ってこないのです。

 

 従って、納税者としても、安易な寄付金課税に基づく修正の慫慂に応ずるのではなく、移転価格税制により処理すべきであるかどうか十分検討すべきかと思います。

 

 しかし、そのためには、移転価格税制上のローカルファイルを作成しておかないと、いざというときに、自社の立場の正当性を説明することは困難になります。

 

 ローカルファイルは、自社を守り、盾となり、やりとなる武器です。ローカルファイルの作成をお勧めします。
ご興味のある方は当事務所までご連絡ください。

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